『ボクの専属美容師』第四話。
新幹線の中で、色々と考えてみる。
そういや、家に連絡するの忘れちゃった…。
急に帰ったら家族はびっくりするだろうな…。
そう思って、ケータイを開いて、実家の電話番号を表示した。
電話をかけようとした瞬間にトンネルに入ってしまって圏外になった。
「…ま、いっか」
この際だから驚かしてやろうと思った。
ハサミ…持って来ちゃった。
もう美容師は辞めようと思ってたのに…。
そうこう考えてるうちに、実家の近くの駅へ到着した。
実家へ向かう途中で、絵里は周りを見渡した。
懐かしい景色が絵里を向かい入れてくれてるようだった。
「うぅ…、まだこっちは寒いや…」
そんな独り言を呟きながら、ようやく実家にたどり着いた。
「ただいまー」
…返事がない。
家へ入ると、誰も居なかった。
「そっか、工場の方か…」
そして絵里は工場へ向かった。
ガシャンガシャンと音を立ててる工場へ入って行くと、大きな声が聞こえた。
「なんだその頭は!」
何事かと、絵里は声のする方へ向かった。
父が一人の男の人に怒鳴りつけていた。
「す、すいません…」
「あ…、あの人!」
そう、あの男は昨日絵里に思いっきり奇抜な髪型にされた男だった。
「今日はいいから、床屋行ってもう少しまともな髪型にしてもらって来い!」
「は、はい…」
そして、男は振り返り、工場を出ようとした。
その時、絵里と目が合った。
男はペコリと会釈をし、工場から出て行った。
「お、お父さん!あの人は?」
「な、何だ絵里!帰って来たのか!?」
「それより、あの人!何でうちの工場にいるの!?」
「あぁ、人手が足りなくて社員を増やしたんだ。そんな事より、あいつの事知ってるのか?」
知ってるも何も、絵里の最後のお客さんだった。
職業柄、お客さんの顔は覚えるようになっていた。
「私、あの人の髪の毛切ってくる!」
「あ、おい、絵里…!」
絵里は父の言葉を最後まで聞かず、男の方へ走って行った。
***
ようやく追いついたところで、絵里は男に話しかけた。
「あのっ!すいません!」
「え?何ですか?」
「あ、私の事覚えてないですか?昨日美容室で…」
「あ!ボクの頭カットしてくれた人ですか!?」
「あの…、ごめんなさい…」
「あはは…、いいよいいよ」
「あの…、もう一度私にカットさせてもらえませんか?」
「また変な髪形にするつもり?」
「い、いえ…、今度はちゃんとします…」
「あはは、冗談だよ、じゃあお願いしようかな」
こうして、二人の奇妙な出会いは幕を開けた。
***
男は上半身裸で、風呂場に座らされた。
「ごめんなさいね、お風呂場しか場所無くて…」
「ここ美容室じゃないからねぇ…、それよりちょっと寒いね」
「すぐ済みますから、ちょっと我慢してください」
絵里は美容室から持ってきたハサミを取り出し、カットを始める。
「あの…、何でうちの工場へ?」
「あぁ、それは話すと長くなるんだけど…」
「教えてください」
「大学の求人募集にここがあったから」
「全然長くないじゃないですか」
二人して笑いあった。
そして、数十分後。
「はい、終わりましたよ」
「いやぁ、助かりました。ところでキミはどうしてこの工場に?」
「あ、ここ。私の実家なんです」
「へぇ、そうなんだ。今日は仕事休みなの?」
「…クビにされちゃいました」
絵里がぎこちなく笑う。
「あ…、悪い事聞いちゃったかな…」
「あの、ところでアナタのお名前は?」
「ボク?ボクは成田成一(ナリタ セイイチ)キミは?」
「私は三鷹絵里です」
「そうか、よろしく、絵里さん」
成一が手を差し出す。
「よ、よろしく」
そして、二人で握手をした。
***
「それにしても凄い偶然だよね」
工場へ向かう途中で成一が話しかける。
「え?」
「だってさ、見ず知らずの昨日カットしてくれた人の実家でまた再会するなんて普通ありえないよ」
成一は笑いながら絵里に話しかける。
「ふふ、そうね」
絵里も自然に笑みがこぼれる。
絵里は思った。
この人の笑顔はなんだか落ち着く。
そんな気分がした。
「おっと、もう工場に着いちゃった。それじゃ、絵里さん、また今度」
「今度って言ってもいつでも会えるじゃない」
「ははっ、それもそうだ、実家だもんね」
「またお父さんに怒られないかしら?」
「今度は怒られないさ。大丈夫!」
成一は笑顔で工場へ入って行った。
***
そして、数ヶ月の時が経った。
絵里と成一はしょっちゅう会っては、よく笑った。
そして、成一の髪の毛を何度も切ってあげた。
そのうち、絵里は成一に恋心を得るようになった。
絵里は成一の屈託の無い笑顔がとても好きだった。
でも、絵里は自分が成一のことを好きでも成一が自分の事を好きじゃなかったらどうしようと思い、中々告白出来なかった。
そんなある日。
「ねぇ、私達ってどういう関係なのかな?」
そう尋ねてみた。
そういうと成一は困った顔をした。
「う~ん、ボクは絵里さんのこと好きだよ?」
「え?」
あまりにもストレートな告白に絵里は戸惑った。
「わ、私も…、成一さんの事、好きかな…」
「じゃ、このまま付き合っちゃおうか?」
「う、うん…」
成一は笑みを絶やさなかった。
こうして、私と成一さんは付き合う事になった。
お父さんも成一さんの事を気に入っていた。
「いやぁ、始めはあんな髪形で入社するもんだからロクでもないヤツだと思ったが、真面目だし、仕事はよくこなしてくれる。あいつはいいやつだ」
そう言ってくれた。
***
そして、数年後。
仕事終わりの成一さんが、私に用があると行って、自宅から呼び出した。
私は何だろうと思い、成一さんについて行った。
成一さんは車を走らせ、夜景の綺麗な場所へ連れて行ってくれた。
「綺麗…」
「あのさ、絵里…」
「何?成一?」
「ボ、ボクの専属美容師になってくれないか?」
絵里は始め、何を言ってるのか分からなかった。
「え?何?どういう事?」
「…結婚しよう!」
成一は指輪を絵里に差し出した。
絵里は驚いた。
だが、それはとても嬉しい驚きだった。
「…えぇ!一生あなただけの美容師になってあげる!」
こうして、絵里と成一は結婚した。
結婚式には昔の美容師仲間も来てくれた。
「よっ!イケてるぜ、子猫ちゃん!」
「兄貴、そういう事はこういう場所で言う言葉じゃないと思うが…」
「ウチより早く結婚するとは先輩に対して失礼ちゃうの?」
「あはは、絵里ちゃん綺麗だねぇ」
恭介さん、俊介さん、静ちゃん、店長さん。
みんな来てくれた。
あの日、あの場所、あの時間に私があのヘアサロンに居なければこの出会いは無かった。
今では、みんなに感謝をこめて、この言葉を贈りたい。
ありがとう。
***
数年後。
私は今は成一さんの専属の美容師だ。
それと、もう一人…。
修太。
私達の息子。
夫とキャッチボールをしている息子。
「パパー!ママ眠っちゃったよ?」
「よし、修太。起こさないようにこっそり毛布をかけてあげよう」
私は、今、とても幸せです。
終わり。
***
今日のあとがき。
本編短けー!!
ってか、クビにしたヤツ結婚式に呼ばないよね、普通。
まぁ作り話だし、いいんじゃね?
っていうか、天空学園がネタ切れです。
なので、その繋ぎということで、不慣れな腐れ純愛ストーリーを書いてみました。
パロディやコメディは得意なんだけど純愛とかそういうのはクサいからイヤなんだよ。
自分で書いててちょっと恥ずかしいもん。
人工彼氏以来の恥ずかしさだよ、まったく。
さて、ケータイに載せるためには今までの作品をどれか消さにゃならん。
わらべ唄の響く夜でも消すか…。
あんま人気無いし…。
次はシェイク&スピアの2部を書きます。
ケータイの方で要望があったものですから…。
さて、奴等は元気にしてるかな?
お楽しみに。
それでは今日はこの辺で。
でわでわ~。

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