『魔法のクスリ』第二話。
私、田中恵(たなかめぐみ)は人生に絶望していた。
一点の光りさえ見えないほどの絶望だ。
そう、彼女は学校でいじめを受けていた。
「…また靴がない」
仕方なく職員室でスリッパを借りて二階の教室に上がる最中に上から水をかけられた。
頭からずぶ濡れになった恵は何事も無かったかのように二階にある教室へ向かう。
「うわ、来たよ。バイキンが」
「何あれ?ずぶ濡れじゃん。今日雨降ってたっけ?」
そんな会話が聞こえる。
あぁ、何で自分だけがこんな目に会わなきゃなんないんだろう?
そう思った。
自分の席に座ろうとしたが、異変を感じた。
「花…?」
そこには花瓶に花が飾ってあった。
花瓶を片付けながら、私はどうしていじめられなきゃならないんだろうと考えていた。
そして、出席を取るときも、私の名前だけ呼ばれなかった。
頼りの先生すらいじめに加わっていた。
帰り道ぎわに女子のリーダー的存在が、私にこう言った。
「アンタさぁ、何で学校来るわけ?」
「なんでって…」
ちゃんと卒業してちゃんとした仕事につく為だ。
「アンタのそういう態度超ムカつくんだけど」
「ご、ごめんなさい」
「ふんっ、明日から来なくていいよ。目障りだから」
どうしてこの女が私に指示してくるのだろうと思った。
「話は終わり、さっさと帰んな」
そうして私の一日は最悪に終わった。
***
帰り道を歩いていると、後ろから誰か付けて来る。
恐る恐る振り返ると、黒いローブにフードを被った人が歩いてきた。
変質者かも…。
そう思って走って逃げると、目前の十字路から男が現れた。
「えっ!?さっきの!」
バッと後ろを振り返ると、そこにローブの男は居なかった。
「アナタは今絶望のど真ん中にいるご様子…」
「だ、だったら何よ!」
「このクスリを使うといい、この世が楽園に変わる」
無理やりに押し付けられたクスリのシート。
そして、それを渡した人物は、「それではまた」と言い残し、去って行った。
「…何なの?一体」
***
家に帰ると、誰も居ない。
母親はパートで留守だし、父親も仕事だ。
一人っ子の私は昔から家に一人で居る事が多かった。
そして、自室に戻り、変質者から貰った怪しげなクスリを眺めていた。
「この世が楽園に変わる…か」
ちょっと興味を惹かれた。
「試しに一錠飲んでみようかな…」
どうせ私がこのクスリで死んだって誰も悲しまないだろう。
そう思いつつ、思い切って一錠飲んでみた。
「…なに?これ…」
ふわふわと宇宙遊泳しているかのような多副感に襲われた。
あぁ、気持ちいい。
なんて気持ちいいんだろう。
いじめの事なんてどうでも良くなってきた。
クスリが切れると、また飲む。
その繰り返しであっという間にクスリが無くなってしまった。
クスリが欲しいクスリが欲しいクスリが欲しい。
彼女は完全にクスリに魅了されていた。
「取り合えず学校行かなきゃ、そうすればまた会えるかも…」
そうして恵は学校へ出かけた。
***
すると、今度は机が無くなっていた。
だがそんな事はどうでもいい。
クスリが貰えれば、学校に来る必要もない。
さっさと早退し、家路に着く。
すると、またローブの男が現れた。
待ってましたと言わんばかりに、ローブの男に近づいた。
「待ってました、それでは取引と致しましょう」
「取引…、私あんまりお金持ってなくて」
「いいえ、ワタクシが頂くのはあなたの魂です」
「魂?」
「言い換えると寿命です」
どうせこのまま生きてたって面白い事なんて無い。
それならば多少寿命が縮まることなんてどうでもよかった。
「あの、お願いします」
「どれくらいの寿命をご希望されますか?」
「う~ん、取り合えず一年くらい…かな?」
「分かりました、それでは取引成立ですね」
すると、ローブの男が私の胸を触ってきた。
「きゃぁ!ちょっと!何すんのよ!」
「こうしなければ魂が頂けませんので…」
「そ、そう…」
言われるがままに胸に手を当てられ、しばらく目をつむっていた。
「はい、取引完了です、それではアナタの一年分の寿命です」
「シートを受け取り、私は逃げ帰るように家に戻った。
「…魂?…寿命?意味分かんない」
それよりクスリだと思って、クスリに手を伸ばす。
そうしてまた多副感におちいる。
こうして恵はクスリに没頭するようになった。
***
今日のあとがき。
一体ローブの男は何者なのか!?
ネガティブに生きる少年少女に向けて、この小説を。
クスリはダメだよ、ワタクシみたくなるから。
最後はハッピーエンドで終わるのか。
今の段階ではまだ考えてません。
なすがままです。
さて、次回は真田君の話に戻ります。
大量に交換した寿命とクスリ。
それをどう使うのか。
それは真田君次第です。
それでは今日はこの辺で。
でわでわ~。
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